ユーザーインタビュー

INTERVIEW

鈴廣かまぼこ株式会社 代表取締役副社長 鈴木悌介

鈴廣かまぼこ株式会社 代表取締役副社長 鈴木悌介

城下町である小田原市には、たくさんの老舗があります。2015年に創業150周年を迎えた鈴廣かまぼこもその一つです。地元に根付いた“食”事業を展開し、150年に渡って小田原市の産業を支えている企業です。鈴廣かまぼこは、湘南電力の掲げる“電力の地産地消”というコンセプトに共感して、湘南電力にいち早く切り替えていただいた企業の一つでもあります。鈴廣かまぼこでは、エネルギーに関する独自の革新的な取り組みをされていると聞いて、副社長の鈴木悌介氏にお話を伺ってきました。

鈴廣かまぼこさんは、省エネに積極的に取り組まれていると聞きましたが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

代表取締役副社長 鈴木悌介
食べ物を扱う商売ですので、安全な食を提供するということはもちろん意識していますが、身体は内側も外側もつながっています。結局のところ、人が安全に安心して暮らすためには、安全な食べものだけでなく、安全な環境も大切です。そう考えたときに、環境に対する意識も変わってきました。安全な食だけでなく、安全な環境も提供できる企業でありたい、そのためにできることはなにか、そんなことを考えているときに起こったのが東日本大震災でした。

東日本大震災で日本全体が節電ムードになりましたが、私たちはそれ以前から省エネに取り組んでいました。ただ、震災を経験して、まだまだ自分たちは甘かったと痛感しました。 震災で電力が不足した2011年の夏に15%の節電を課された私たちは、あえて20%の節電に挑戦しました。運用面、特に生産計画の見直しを行って、電力使用のピークにあたる時間帯の工場の生産ラインを減らし、その代わり稼働日を増やすなどして採算をあわせる工夫をしました。こうした取り組みによって、十分な効果を得て目標を達成したのですが、私はこのとき、設備改善などにも覚悟を決めて取り組めば、もっと省エネできるのではないかという手ごたえを感じました。
本社
この本社ビルは、その思いを具現化したものです。 昨年8月に完成したこの建物(本社)には、実はいろいろな工夫がつまっていて、通常の同じ規模の建物と比べて半分以下の電力しか使っていません。完成前は、削減率54%と試算していましたが、この1年間実際に使ってみて、おそらく60%近い削減率になるのではないかと思います。 これだけの削減率を達成するために、創エネ・省エネ・蓄エネにつながるあらゆる設備を導入しています。例えば、このビルの空調に は地熱と井戸水を利用しています。

井戸水、というと水力発電ということですか?

水力発電ではありません。エネルギーというと、皆さんすぐに電力を思い浮かべると思いますが、実はそうではありません。神奈川県で使われているエネルギーの中で、電力として使われているのは33%ほどです。小田原市でも47%。残りはなにかというと熱なのです。 私たちは、ほとんどの場合、電力を使って熱を作り出しています。しかし、太陽熱や地熱、井戸水などのように、熱源となりうるものは、そのまま熱として活用するほうが効率が良いのです。

例えば、この建物の空調に利用している井戸水は、年間を通して大体16度くらいです。そこで、井戸水をラジエーター代わりに利用して空気を冷やす(温める)と、非常に効率よく空調に活用することができるというわけです。 井戸水の他にも、太陽光パネルや太陽熱パネル、蓄電池、光ダクトを使った照明などを採用しています。また、熱を効率的に利用できるよう、建物自体も高気密・高断熱にしています。こうした工夫によってエネルギー使用量を半分以上削減し、さらに、湘南電力から電力供給を受けることで、エネルギーの地産地消が実現するというわけです。 私は、エネルギーの地産地消は地方創生に結びつくと思っています。日本には、その土地土地に風土や文化があります。その土地の特性を活かしたエネルギーを生み出し、うまく組み合わせていけるかが地方創生に結びつくポイントになると思います。

鈴木さんは、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク」という団体の代表も務められていると聞きましたが?

震災後、原発に対する意見が様々飛び交いました。経済のためには絶対に必要だという人と原発絶対反対という人、そして判断に迷う多くの人たち。私は、原発に経済合理性はないと考えていますし、未来に負の遺産を残すことになった福島の例をみても、原発には反対です。しかし、ただ原発反対というのではなくて、経営者だからこそできるデモンストレーションがあるのではないかと考えました。そこで、2012年に立ち上げたのが「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク」、通称「エネ経会議」です。当初120人の仲間がいて、一般社団法人にした現在では、370社の経営者に参画していただいています。 この会のコンセプトは2つ。「自社でできることからやる!」ということと「自分の地域でできることからやる!」ということです。自社でできることとしては、例えば省エネや創エネなどがありますし、地域でできることとしては、エネルギーの地産地消の取り組みなどが挙げられると思います。 エネ経会議では、「エネルギーなんでも相談所」という相談窓口を設けています。専門家の方々にも協力していただいて、経営者がエネルギーに関することを何でも相談できるようにしています。経営者にノウハウを伝えて、自分でできることから実践してもらえればと思っています。この本社ビルの建設にあたっても、なんでも相談所の専門家の方々に協力していただきました。

湘南電力に決めていただいた理由は、電気代削減に期待されたからということでしょうか?

一番は、地元の会社であるという安心感です。 「小田原箱根エネルギーコンソーシアム」を組織しているほうとくエネルギーさんや、100年以上続いている小田原ガスさん・古川さんにしても、地元小田原市のエネルギー企業であり、顔が見える人たちがやっているという安心感があります。逆に、企業側も、地元の目にさらされて、ごまかしが利かない責任を背負っています。湘南電力も、地元に根付いた電力会社であってほしいと思います。また、小田原市や神奈川県だけが、電力の地産地消を実現できればいいということではなく、湘南電力の取り組みやビジネスモデルが全国の模範となって広がっていき、仲間が増えて、全国にネットワークができていくことを期待しています。
賞状
本社ビルの省エネの取り組みは、神奈川県の「かながわ地球環境賞」を受賞。ネット・ゼロ・エネルギー・ビル補助金の採択により省エネ機器などにかかる費用の2/3が経済産業省から補助された。
小田原産木材
本社で使用している木材は小田原産。建築の主となる材料にはならないものの、その自然の風合いを活かして使用している
光ダクト
自然光を取り入れ照明器具との連係で自動調光を行い、電気使用量を削減している。
パネル
社内の様々なところに、省エネの取り組みを説明するパネルが置かれている。
住所:神奈川県小田原市風祭245
TEL:0465-24-3141
鈴廣ブランド商品の製造部門 等
鈴廣かまぼこ株式会社

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